がんになりました

公衆衛生医が乳がん治療中に体験したこと、調べたこと、感じたこと、考えたことを記録していきます。

高額医療費

(初出2019年9月23日)

先週、治療費のことでちょっとびっくりしたことがありました。が、これを書くために、3ヶ月前に遡ります。

化学療法の初日6月27日に、外来化学治療室でオリエンテーションを受けました。スケジュール、薬の内容や副作用の説明とともに、治療費の話もあり「治療費は、高額医療費制度の自己負担限度額を超えますから、あらかじめ「限度額適用認定証」をとっておくといいです。」と言われました。

多くの人にとっての自己負担限度額が80.100円+α/月というのは知っていました。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のことを少し教えているのですが、UHCの目標の1つが「壊滅的な保健医療関連出費による貧困化の予防」です。そしてWHOなどによる「壊滅的出費」の目安は、世帯収入から食費を含む生活必需品のための経費を引いた残りの30-40%を超えること。日本の高額医療費制度は、UHCの議論より先にできていますが、限度額設定はおおよそこれに近いと考えます。

で、いざ、我が身に実際降りかかって、「月8万ちょっとというのはちょっと高いけど、定収入あるし、ひとり身だし、まあ払えない額じゃない。でも、年収約370万円(適用区分下限)の人や、子どもが多い人にはきついだろうなぁ。」というのが、最初の感想。

そして、支払をしてみると、初回の化学療法日に病院で19,270円と薬局(主に制吐剤)で5,520円、翌日ジーラスタ(白血球を増やす注射、レジメンの中に入っています)を打って32,480円、しめて57,270円。「月2回だと毎月約12万弱かぁ。高額医療費制度で9万弱ですむのはありがたいけど、患者数が結構多い病気だし、これひとつとっても社会保障費がかさむのが実感できるなぁ。」というのが次の感想。

ところが、限度額適用認定証が届いてみると、1つ上の区分。(私たちの年代で正規雇用の年収だとそうなることも多いようなのです。)この区分の限度額が167,400円+α、つまり限度額の適用にならなさそうなのです。最初はさすがにひるみましたが、「月12万円でも、まだ私にとっては「壊滅的出費」ではないんだから、日本の公的保険制度を支えるためには、払える者が払うしかないなぁ。」というのがその次の感想。

これが2ヶ月続き、2つめのレジメンは、制吐剤も減ってジーラスタもなくなり、1回1万円を少し超える程度。毎週なので、月の合計4万円とちょっとというのが3ヶ月間続く予定で1ヶ月経過したところで、共済組合(現在加入している保険)からおハガキ。これが先週のびっくり。

日本の社会保障制度に詳しい人なら、ここまでの私の感想の一部に誤解があったことにお気付きかもしれませんが。長くなったので、続きはまたの機会に。(写真は、一昨日のごちそう。2つ目のレジメンになってからはほとんど食欲不振はないです。でもビールは私のではありません、念のため。)

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