がんになりました

公衆衛生医が乳がん治療中に体験したこと、調べたこと、感じたこと、考えたことを記録していきます。

Go flatと乳房再建

(初出2019年10月20日

先週の毎日新聞(オンライン版)の医療欄にもアピアランスサポート(記事は「アピアランスケア」でしたが)が掲載されていて、関心が高まっていることを感じています。
https://mainichi.jp/…/health/a…/20191010/med/00m/070/001000d

以前の投稿で、自分は安価で質の高いウィッグをNPOで手配してもらったことを書いたら、イギリス人の同じ病気を経験した友人(ロンドン在住)から「自分はウィッグを100kmも離れたところに買いに行き、結構大金を費やした。」とメールをもらいました。(Google翻訳で読んだとのこと。)日本の方が状況はいいのでしょうか??日本では、病院の売店で売っているような数千円のものから、アデランスやスヴェンソンなど大手メーカーのオーダーメイドで数十万円するものまでよりどりみどり。無料情報誌もたくさん出ていて、選ぶのが大変そうです。

切除後の選択肢も増えているようです。乳房再建が、自家組織によるものは2006年から、インプラントによるものは2013年から保険適用となっています。ある病院のサイトでは、「当院では、乳がん手術の半数が全摘で、その半数が再建を希望しています。」となっていました。病院による差は大きいと思いますが、保険適用となったことで、増えていることは確かだと思います。

個人的には、自分が全摘術や部分切除術をしていた頃、再建を希望する患者さんがいると形成外科に依頼して大きな手術をしてもらっていたという古い記憶と、何より、まあ今さら、というのがあり、即答で「しません。」とお答えしました。が、後から、自分みたいに即答する人ばかりではきっとないのだろうなあ、もっと人並みに悩んだら?!と妙に医師視点になってひとりツッコミを入れたりもしました。

その後、ちょっと調べていると、アメリカでは「Going Flat(再建をしない選択)」なる運動があることを見つけました。
https://www.breastcancer.org/…/reconstruc…/no-reconstruction
挙げられている「懸念」は、現在では、懸念というほどでもなくなってきているようにも思いますが、主張がアメリカンな感じで興味深いです。(ステレオタイプで不謹慎でしょうか、、、)個人の選択なので、声高に言うほどでもない気もしますが、でも、いろいろな考え方があるのは当然だと思います。そして、選択肢が豊富なのはありがたいことです。

まあ、再建を選ばない人のための、パッドやエピテーゼ(医療用具として体の表面に取り付ける人工物)もすごい。「アピアランスサポート」となると、再建よりこちらを指すようです。若干生々しくなるので、これ以上書きませんが、カタログ見ているだけで、飽きません。

、、、でも、語弊があることを覚悟で書けば、がん治療がままならないところも世界には多い中、これほどがんの治療成績のよい国に住んで、なくても生きていけるものまで、自分たちにだけこんなに選択肢があって申し訳ない気も、実はしているのです。

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