がんになりました

公衆衛生医が乳がん治療中に体験したこと、調べたこと、感じたこと、考えたことを記録していきます。

妊孕性保存

私はこれで悩むことはなかったのですが(残念ながら)、若い人でがん治療をする人も増えているので、その人たちには「治療後に子どもを持てるか」と言う問題が出てきます。

ちょうど、妊孕性保存についての看護師の理解をテーマにした論文審査にあたったりしたところに、NHKのクローズアップ現代プラスで取り上げられていて、hot issueなんだと気づかされました。

がんを乗り越え、命を授かる〜若い世代のがんと生殖医療最前線」(クローズアップ現代プラス)

AYA世代とは、adolescent and young adult(思春期・若年成人)のことで、15〜39歳をさすそうですが、「AYA世代のがん」と言うのはすでに用語となっているようです。

この世代の人たちは、治療が妊娠・出産の時期に重なるけれども、がん治療の中には、生殖機能に影響を及ぼすものがあるので、生殖機能に関する相談や支援が必要、と言う動きになって来ているようです。

がん治療と妊娠・出産について」(国立がん研究センター中央病院)

クローズアップ現代で言われていたのが、「時間の壁」「費用の壁」「医療連携の壁」

費用の壁と医療連携の壁は、多かれ少なかれ、いろいろな疾患、特に慢性疾患治療の現場では付いてくるように思います。一方、時間の壁、と言うのは「がん治療」と「生殖医療」を同時に考えなくてはならない、というかなり特殊な壁かもしれません。

子どもを持てるかどうか、とマンションが買えるかどうか、を比べるのは不謹慎かもしれませんが、自分のがんはかなり進行が遅いタイプのものなのですが(Ki67と言うがん増殖能を示すマーカーが1%未満)、それでも診断を受けた後はドタバタして、ローン審査(団体信用生命保険の審査)に落ちた後、他の選択肢を考える時間的余裕はなかったように思います。

がんになる人が増えて、がんの治療成績があがって、治療後も長く生きて行く人が多い現在、がんとともに生活していく、と言うのはますます課題になっていくのだと思います。

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ネット上から画像をいただいた、がん研究会有明病院のハンドブックの表紙。