がんになりました

公衆衛生医が乳がん治療中に体験したこと、調べたこと、感じたこと、考えたことを記録していきます。

カペシタビン開始

術後化学療法がはじまりました。ブランド名ゼローダで知られている、経口薬のカペシタビンです。

術前化学療法の時の点滴薬に比べたら副作用はずっと軽いようですが、やはり化学療法ですので多少は骨髄抑制で白血球が減って感染しやすくなる可能性もあります。それで、穿刺ドレナージの処置をしている間は延期になっていました。

実は、カペシタビンを乳がんの術後化学療法に用いるのは、現時点では「標準治療」ではありません。

手術してから化学療法を受けるのが、基本的な標準治療なのですが、腫瘍を小さくしてから手術をする目的で、術前化学療法をする方法は標準診療ガイドラインに載っています。全摘ではなく部分切除(乳房温存)を希望する時などに選択されます。

私の場合、腫瘍が大きめ(4.5cm)だったので、主治医も「術前化学療法をしても、温存は厳しいでしょう。」と言っていましたし、私自身、乳房温存を特に希望していませんでしたので、術前に化学療法をする意義が感じられず、手術を先にやる標準治療をして欲しいと考えていました。

しかし、勧められたのは、トリプルネガティブという私のタイプの乳がんについて、術前化学療法を受けた後に手術をして、手術で切除した乳房の病理学検査でがんが消滅していなければ、術後の化学療法を追加する、というまだ標準治療にはなっていない方法でした。

この方法のメリットは、化学療法が効いてがんが消滅していれば(専門用語で「病理学的完全奏功」と言います。)予後がよいということがわかる、「病理学的完全奏功」していなかった時に有効であることが「期待される」次の治療法がある、と説明されました。

そして、主治医曰く「現時点では、まだ標準治療にはなっていませんが、有力な研究結果が出てきているので、次の標準診療ガイドラインには載ると思います。」とのことでした。

確かに、その時点で最新版だった2018年度版の「乳がん診療ガイドライン」では、カペシタビンによる追加治療は、まだ「推奨する」とはされていませんでしたが、「予後を改善することが期待される」と書かれて、教えていただいた論文などが引用されています。

さっさと手術してスッキリしたい、最新治療より標準治療を受けたい、としばらく悩んだのですが、最終的に、術前化学療法→手術→残っていれば術後化学療法、という勧められた方法に同意するにいたったわけです。

後から気づいたのですが、2018年度版「乳がん診療ガイドライン」は2019年10月に追補版が出たのですが、今回勧められた治療方法は「まだデータが不足しているが、今後の重要な課題と考えられる」ものの1つとして掲載されていました。

なにはともあれ、これから半年間の服薬です。

f:id:mm-higuchi99:20200118163413j:plain