がんになりました

公衆衛生医が乳がん治療中に体験したこと、調べたこと、感じたこと、考えたことを記録していきます。

研究室のリラックスチェア(化学療法と仕事の両立)

「がん治療と仕事の両立」ということを、最近よく耳にするようになってきました。

このサイトでしばしば紹介している国立がん研究センター・がん情報サービスにも「がんと共に働く」というページがあります。このページとリンクした「がんと共に働く 知る・伝える・動き出す」というサイトも、調査結果やガイドブック、体験談や各種レポートなどとても充実しています。(ただ、このサイトはプロジェクト終了に伴い、2019年6月30日を持ってサイトの更新はなくなったようです。)厚労省にのサイトにも「治療と仕事の両立について」というページがあって、各種資料が見られるようになっています。こちらはどちらかというと事業所向けのようです。

検索したらもっともっとあります。化学療法剤そのものや吐き気どめなどの支持療法の発達で、外来化学療法が可能になってきていることもあり、がん治療をしながら働く人や、がん治療中の人を雇用している事業所が増えているということだと思います。

自分が最初に受けたdose dense EC(エピルビシンとシクロフォスファマイド)療法は外来化学療法ができる(入院しない)中では副作用がきつい化学療法のひとつと言われています。この間だけ休職する人もいると主治医からも外来化学療法室のナースからも説明されました。でも、これを受けていた昨年6-8月も休職せずにいられました。

自分の場合、かなり特殊な状況で仕事を休まずにいられたのだと思います。ひとつには、裁量労働制の職種であること、もうひとつには職場で個室があてがわれていること、この2点は化学療法と仕事を両立させるためには恵まれた条件でした。また、ペーパーワークをバイトさんにお願いすることもできました。

さらに、学生の夏休みという業務が少し減る時期が重なったこと、治療が木・金曜日だったことも幸運でした。

2週間ごとの木曜日に3時間ほどかけて化学療法剤の点滴を受けたのですが(検査や診察を入れると5時間くらい)、勤務時間は自分で調整できるので、欠勤はせずに外来の前と後に出勤。当日は終了後もちょっとしんどいかな、気持ち悪いかな、という程度でした。金曜日は白血球を増やすG-CSFという注射があったのですが、これはすぐすむので、外来後出勤。その後じわじわしんどくなります。

その日の夜か、翌日くらいから結構しんどくなって熱が出たりしましたが、このもっともしんどい時期がうまく週末と重なってくれたのです。土・日曜日は家でぐたーっとしていました。

開けて月曜日にはやや回復するので出勤はしたのですが、あまり仕事になりません。火曜日、水曜日も休み休み仕事し、治療の1週間後にやっとほどほどに戻って1週間過ごした後、また治療という感じでした。

この休み休み仕事をしていた時に活躍したのが、折りたたみのリラックスチェア。これがなかったら、治療後の月・火・水曜日あたりはひょっとしたら出勤するのが難しかったかもしれません。

決められた時間に、他の人と机を並べて仕事をしている場合は、職場でしんどい時は休みながらほどほどに、というのはやはり難しいでしょう。化学療法と仕事の両立には、仕事量や就労時間、休憩場所の確保など職場の支援が欠かせないのだと思います。

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しんどい時に休むために研究室に置いていたリラックスチェア。