がんになりました

公衆衛生医が乳がん治療中に体験したこと、調べたこと、感じたこと、考えたことを記録していきます。

「わたしも、がんでした。」

度々ご紹介している、国立がんセンター・がん対策情報センターによる2013年出版の本です。サブタイトルに「がんと共に生きるための処方箋」とあるように、がん患者の社会生活について書かれています。がん情報サービスのサイトからWebページで読むことができますし、普通の書籍電子書籍で買うこともできます。

以前書いた「がんになったら手にとるガイド」や、この後紹介したいと思っている「もしも、がんが再発したら」も国立がん研究センター・がん対策情報センターによる2012年出版の本です。この頃から、がん患者の生活の質向上とそのために必要な情報提供の重要性への関心が高まってきたことに応えたものだと思われます。

たしかに、「わたしも、がんでした。」の中に、2013年にがん研究センターの組織改革が行われ、がん対策情報センターの中に「がんサバイバーシップ支援研究部」と「がん政策科学研究部」が設置されたという記述があります。

”はじめに”にあるように「『がんになったら、人生は終わり』という時代ではないのです。」ということに、社会は気づきつつありますが、では、実際にどうしたらいいのか?どこで情報を得たらいいのか?について、本人、家族、病院、職場、地域、とさまざまな角度から示唆してくれています。

有用な情報源の紹介とともに、メモしておきたい言葉が並びます。ほんの一部を紹介すると、

  • がんと共に生き、働くためには、常に患者さん本人の「心構え=マインドセット」を念頭におきながら、「実際何をするか=行動のマネジメント」が大切です。(p86)
  • がんは第二の人生のスタートです。(p107)
  • 日本では、生涯のうちに2人に1人ががんにかかり、そのうち3人に1人が就労可能な年齢です。(p121)
  • 最近、がんは慢性疾患、ありふれた疾患と見なされるようになりました。つまり、「がんと共に生きる」ことは、高血圧患者と同じくらいごく普通になったのです。(p126)
  • 生産年齢人口(15〜64歳)で新規にがんにかかる方の数は毎年20数万人にのぼります。(p134)
  • 社員に対する対応策を「制度」「運用」「配慮」の3つに分けて考えています。(p151)
  • 相談は、3つの「はなす」ことにもつながっていきます。(「話す」「離す」「放す」)(p213)

そして、”おわりに”には、「『がんと闘う』から『がんと共に生きる』『がんと共に働く』へ時代が変化しています。」とあります。

自分が臨床医としてがんにも関わってきた1990年代から、がんを取り巻く状況は本当に大きく変わったと実感しています。治療して「無再発期間」や「生存期間」を延ばせばいいだけの時代ではなくなっています。

それだけに、どうやって信頼できる情報を入手したらいいのか、というのは、当事者や、関係者(家族や職場の人びと)にとって課題のひとつかと思います。出版からすでに7年が経過していますが、この本には、そのヒントが詰まっていると思います。

f:id:mm-higuchi99:20200322150116j:plain

たくさん付箋紙を貼りながら読みました。